骨系統疾患(軟骨無形成症をふくむ)
1.はじめに

骨系統疾患は骨・軟骨をはじめとする骨格を形成する結合組織の成長・発達・分化の障害により骨格の異常をきたす疾患の総称です。従って、骨系統疾患の中核をなす骨軟骨異形成症(osteochondrodysplasia)以外にも、骨の先天奇形である異骨症(dysostosis)、奇形症候群、代謝疾患、内分泌疾患、特発性骨溶解症、染色体異常、その他のものが骨系統疾患(先天性、後天性)に含まれます。
骨系統疾患の診断、鑑別診断に当っては、これまではX線診断、身体所見、病歴、臨床検査所見が主体となり、分類されてきました。しかし、骨系統疾患の原因遺伝子が近年次々に明らかになっていることに伴い、国際分類法が1997年に改訂されました。これは「familyの概念」、すなわち、病因を見越した形態学的な類似点による疾患のグループ化によっています。これによって、約200種類といわれている疾患は32のグループに分けられ、そのうち100近い疾患には原因遺伝子が見つかっています。これらをすべて覚えることは困難であり、またあまり意味がありません。整形外科医として重要なことは骨格の形成のどの部分が障害されるとどのような臨床所見が見られ、それをどのように治療に生かしていくかということです。

2..診断
骨系統疾患は遺伝子の異常による骨格の成長・発達障害です。従って、主訴の多くは、低身長、骨格の変形、運動機能異常、易骨折性などです。特に低身長は最も一般的な訴えで、小児科や整形外科を受診するきっかけになる症状です。
遺伝性疾患が多いので、詳細な家族歴を聴取することが重要です。合併症についてもよく検索することが重要です。骨軟骨以外の中胚葉系組織(筋、靱帯、関節包、血管、心臓、生殖器、腎臓など)、や外胚葉系組織(表皮、爪、毛髪、神経、眼、歯など)の異常を伴うことが多いからです。
低身長(小人症)の患者さんを診察する際、まず、体型の特徴を記載することから始めます。四肢と体幹の比から次の3タイプの小人症に分類します。
A.四肢短縮型
B.体幹短縮型
C.均衡型
Aの四肢短縮型はさらに四肢分節の比から、
a. 近位肢節短縮型(rhizomelic)
b.中間肢節短縮型(mesomelic)
c.遠位肢節短縮型(acromelic)
d.遠位中間肢節短縮型(acro-mesomelic)
というタイプに分類されます。これに他の身体的特徴や個々の疾患に特異的なX線所見などを考慮して診断が確定します。原因遺伝子が特定されている疾患では遺伝子解析が確定診断に役立ちます。
3.治 療

臨床上、最も重要なことは、正しく診断し、その疾患の自然経過・予後を患者さんに提示することです。また、その疾患の予後を良い方向へ変える可能性のある方法がある場合、それを提示することです。
遺伝子の異常に直接アプローチするような治療法(遺伝子治療)が可能であれば骨系統疾患をもつ患者さんにとって最も理想的です。しかし、残念ながらこれは現時点ではまだ当分難しいようです。従って現時点での骨系統疾患に対する治療は、低身長に対する成長ホルモン療法と骨延長術、骨変形に対する各種骨切り術などになります。
achondroplasia(軟骨無形成症)は成長ホルモンの異常による疾患ではありませんが、最近、本疾患に対する成長ホルモン療法(http://www.achondro.net/explanation4.html)の臨床的有用性が認められ、保険が適応されるようになりました。
そのため、多くの成長期の軟骨無形成症の方々が、成長ホルモン療法を行っており、その有用性も徐々に明らかになっていくでしょう。
骨延長術や各種の矯正骨切り術は現時点での最も効果の確実な骨系統疾患の治療法の一つと言えるでしょう。特に骨延長術は一度の手術で10cm前後の延長が可能で、成長が終了しても行うことが可能です。イリザロフ法が1980年代の後半になって日本に導入されたことは低身長に悩む多くの患者さんたちの福音となりました。この手術により日常生活に支障をきたすような低身長が改善され、四肢短縮型の小人症に対してはバランスの取れた体型を獲得することが可能となったのです。たとえば、近位肢節短縮型の患者さんには上腕骨や大腿骨のみの延長を、中間肢節短縮型の患者さんには下腿骨(まれに前腕)のみの延長を行うことでバランスの取れた機能的な四肢を再建できます。骨系統疾患にしばしば伴う骨の複雑な変形を同時に矯正できることも大きな利点で、下肢の機能軸の再建は跛行の改善や将来の変形性関節症の予防に大いに貢献します。

4.代表的な骨系統疾患
a. 軟骨無形成症(achondroplasia)
骨系統疾患のうち最も頻度が高い疾患です。軽症型である軟骨低形成症(hypochondroplasia)とともに国際分類で軟骨無形成症グループ(FGFR3グループ)に属しています。
四肢近位肢節短縮型小人症で、低身長は生後 1 年で著明となります。遺伝形式は常染色体優性遺伝ですが、約80%は突然変異で、正常の両親から出生します。FGFR3 ( fibroblast growth factor receptor 3, 線維芽細胞増殖因子受容体 ) の遺伝子 ( 4p 16.3 ) の点突然変異が原因であることが近年明らかになりました。
<臨床的特徴 >
 ・特有の顔貌
   大きな頭
   前額部の突出
   鼻根部の陥凹
   顔面中央部の低形成

 ・脊柱の変形
   胸腰椎移行部の後弯増強
   腰椎部の前弯増強

 ・その他の異常
   三尖手 ( trident hand )
   筋緊張の低下
   水頭症 ( 生後より )
   頚髄圧迫
   外耳道変形 : 難聴、中耳炎の続発
   歯牙密集による不正噛合
   O 脚、X 脚
   運動発達の遅延
   耐糖能の異常
   思春期以降の肥満
   出産の際の経膣分娩困難 → 帝王切開
   中年以降の脊柱管狭窄症

<X線所見の特徴>
 ・短縮した頭蓋底
 ・大後頭孔の狭窄
 ・脊柱管前後形の短縮
 ・腰椎の椎弓根の間の距離の短縮
 ・胸腰椎移行部の椎体の楔状変形
 ・シャンペングラス状の小骨盤腔
 ・股関節は水平臼蓋
 ・小さい坐骨切痕
 ・長管骨は太く短く、軽度の弯曲
 ・骨幹端の膨隆
 ・骨端線の斜走、V型骨端線
 ・大腿骨頚部の短縮

<治療法>
 ・大後頭孔の狭窄に対する大後頭孔の拡大術
 ・四肢長管骨の変形矯正骨切り、骨延長
 ・腰部脊柱管狭窄症に対する脊柱管拡大術、固定術
  その他、耳鼻科、内科の治療など・・・ 
b.軟骨外胚葉異形成症(chondroectodermal dysplasia, Ellis- van Creveld syndrome)
遠位中間肢節短縮型小人症の代表的疾患です。国際分類では短肋骨異形成症グループに分類されています。常染色体劣性遺伝形式の極めて稀な疾患です。
<本疾患の特徴>
 ・ 年齢とともに顕著となる外反膝変形
 ・ 短指症、軸後性多指症(時に軸後性多趾症)
 ・ 小さく変形した爪
 ・ 歯牙形成不全
 ・ 先天性心疾患(心房中隔欠損)
整形外科的治療は外反膝の矯正骨切りですが、独特の変形のため矯正は難しく、しかも再発傾向が強いため、多数回の手術を要する傾向にあります。また、極端な下肢のmesomelic patternのため、イリザロフ法で変形矯正と同時に下腿の延長術を行うと低身長と下肢のバランスが改善します。
b.脊椎骨端異形成症 (spondyloepiphyseal dysplasia congenita), Kniest dysplasia
国際分類でType II collagenopathiesに分類される疾患群です。II型コラーゲンは椎間板の髄核、軟骨、硝子体を構成する主要なコラーゲンです。従って、脊椎の異常を伴う体幹短縮型小人症や近視、網膜変性などの共通の特徴があります。
<臨床的特徴 >
 ・低身長・内反足・口蓋裂・後側弯症
 ・近視・網膜剥離
 ・難聴(Kniest dysplasia)
 ・軸椎歯突起の形成不全
 ・関節拘縮(Kniest dysplasia)
 ・X線所見
 ・脊椎骨、骨端部の骨化遅延
 "dumbbell appearance" (Kniest dysplasia)
 ・手指中節骨の遠位骨化核の存在(Kniest dysplasia)
 ・内反股
 ・整形外科的治療
 ・内反股や下肢のアライメント異常に対する矯正骨切り術
 ・後側弯症治療
 ・環軸椎不安定症に対する治療
c. 骨幹端異形成症(metaphyseal chondrodysplasia)

国際分類でMetaphyseal dysplasiaのグループに属し、Jansen type, Schmidt type, McKusick type、その他5タイプが記載されています。四肢短縮型小人症となります。
整形外科的治療は下肢の変形矯正が中心となります。

d. 脊椎骨幹端異形成症(spondylometaphyseal dysplasia)

国際分類でspondylometaphyseal dysplasiaのグループに属し、Kozlowski type、その他4タイプが記載されています。骨幹端異形成症に脊椎病変が加わっています。


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