Q1.
延長術は何歳くらいまで可能ですか?
治療の対象は骨の成長がストップした方です。だいたい男性で18歳以上、女性で16歳以上が年齢の下限になります。年齢が高くなるほど延長仮骨(延長に伴い新しく形成される骨)の形成は不良になり、周囲の筋肉や神経の伸びが骨の伸びについていきにくくなります。それらの条件を考えますと、理想は35歳まで、条件が合えば40歳くらいまでは可能な場合もあります。
Q2.
誰でも延長術を受けることができますか?
心身ともに健康な方が対象です。ただし糖尿病などの内科的疾患の方や副腎皮質ステロイドを投与中の方、精神疾患の方は治療適応にはなりません。麻痺性疾患がある方も適応にはなりません。また、喫煙者は骨の形成が不良となりますので、延長術の対象とはなりません。血縁者で全身麻酔のアレルギーのある方がいらっしゃる方も適応とならない場合がありますので、事前にかならず医師に申告してください。
Q3.
具体的にどの骨を伸ばすのでしょうか?
下腿の骨(膝下)の延長を行います。大腿(膝上、太もも)の延長も可能ですが、延長中の日常生活動作が極めて不自由になりますので、成人の方にはかなり酷な治療となり、基本的にはお勧めしません。
Q4.
10センチくらい延長したいのですが、可能ですか?
成長が終了した成人の方の場合、現実的なゴールは5センチです。10センチの延長を機能障害を残さず1回の手術でおこなうのは不可能です。ただ、個人差が大変大きく、うまくいけば6~8センチも可能な場合もありますし、5センチに達しない場合もあります。バランスを考えると下腿だけで7センチ以上延長すると非常にアンバランスになり、外観上、あまりよくないと思います。大腿の延長をおこなえば、下腿と合わせて10センチの延長も可能ですが、上記のとおりお勧めできません。ただし、軟骨無形成症などの先天性疾患に伴う小人症で、筋肉や皮膚などに余裕がある場合は、10センチあるいはそれ以上の延長が可能です。
Q5.
治療期間はどれ位かかりますか?
5センチの延長で、創外固定器装着期間は平均約3~4ヶ月です。しかし個人差が大きく、非常に骨形成が不良の場合1~2年以上の治療期間を要する場合もあります。
Q6.
入院中の付き添いは必要ですか?
入院中はスタッフが生活の介助を行いますので、基本的には付き添いは不要です。しかし、退院後の固定器を装着した状態での日常生活動作、あるいは経過観察のための通院のことを考えると身の回りのお世話をしてくださる方がいるのが理想的です。
Q7.
手術後はいつから歩けるのですか?
これも大変個人差が大きく、早い方は手術して1週間後から、遅くても退院するまでには松葉杖歩行が可能になります。
Q8.
傷は残りますか?
片側で5-6本のワイヤーと2-3本のピンを刺入しますので、その痕が残ってしまいます。また骨を切るための傷も片側あたり2ヶ所できます。髄内釘の挿入口の傷は時間とともに色が薄くなり目立たなくなる方もおられますし、褐色の大変目立つ傷になって残ることもあります。男性の場合、毛に隠れて目立たないことが多いのですが、女性の方はどうしても目立ってしまいますので、このことを十分に考慮に入れて手術に臨む必要があります。
Q9.
延長術を受ける前に心がけておかなければならないことはありますか?
延長は長期にわたる治療になる可能性がありますので、治療期間に余裕を持って準備してください。『○○ヶ月しか休みが取れないのでその間に治療を』というような切羽詰った状況では、万一のトラブルのときに対応ができません。また、退院後の生活について、日常生活を援助してくれる方を確保しておくこと、車椅子や松葉杖などを準備しておくことが必要です。また、関節の柔軟性がないと延長中の関節拘縮が強くなりますので、特に膝や足首の関節の柔軟運動を行っておくことが重要です。
Q10.
延長術により後遺症が残ってしまうことはないでしょうか?
骨延長を行うことで、多少の関節の可動域(動く範囲)制限や筋力低下が起こることがあります。そのような場合、運動能力が若干低下することがあります。また、延長により骨がまっすぐ伸びずに曲がってしまうことがありますが、イリザロフ法では変形した骨を矯正することも可能ですので、延長中に曲がった骨は延長終了時に矯正することが可能です。
Q11.
手術後、シャワーや入浴はいつごろから可能ですか?
術後10日目ぐらいから創外固定器を付けたまま入浴をおこなっています。もちろん傷の具合を確認してからですが、湯船に浸かって入浴していただくことが可能です。
Q12.
私は今19歳ですが、20歳を過ぎても背が伸びたという話を聞きました。実際、身長は何歳くらいまで伸びる可能性がありますか?
身長は骨の端にある骨端線(成長軟骨板)という部分で伸びていきます。この部分は成長とともに幅が狭くなっていき、成長が終了するとこの線が見えなくなり(骨端線の閉鎖)、大人の骨になります。それ以降は決して骨が伸びることはありません。骨端線が閉鎖する年齢は男性で17~18歳、女性で16~17歳くらいです。多少の個人差はありますが、20歳を越えて身長が伸びることはまずありません。ただし、しばらく臥床した後や、身体を強くストレッチした後などは一時的に少しだけ身長が伸びますので(脊椎の間の椎間板などの軟部組織の柔軟性のため)、背が高くなったような錯覚に陥ります。朝の身長が夜の身長より少し高いのと同じ理屈です。
詳しくはカウンセリングでお話させていただきます。
Q13.
固定器をつけない治療法はないのでしょうか?
イリザロフ法(固定器)を用いず、延長機構が内蔵された髄内釘を用いる治療方法もあります。現在、アメリカで使用されております。安全性が確認されれば将来当クリニックでも導入する可能性はありますが、現在は実績があり、安全性・確実性、またコスト面にも優れるLON法(イリザロフ法+髄内釘)を行っています。
Q14.
入院は必ず必要でしょうか?
当クリニックでは緊急時、迅速に対応ができるように入院をしていただいております。特に骨きり術後は出血や脂肪塞栓症に注意が必要ですし、全身麻酔による副作用や合併症が起こりうるからです。
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