特集:イリザロフ法とその後の展開

美容的脚延長術

柏木 直也  吉野 宏一  瀬戸 洋一

要旨
近年、身長に影響するような疾患のない方の低身長に対してもイリザロフ法による骨延長術が適応されるようになり、その報告が散見されるようになっている。手術手技は従来の骨延長術と変わることはないが、元来健常な方に行われる手術であるため、治療期間や治療中の生活、合併症などについての術前の十分なインフォームドコンセントが特に重要となる。また、患者側が手術について十分に理解し、十分なモチベーションを持っていることが必須である。その上で、イリザロフ法の手技および合併症対策に精通した医師が行えば、美容的脚延長術は患者に大きな満足をもたらす治療である。

はじめに

骨延長術は、組織が緩徐な牽引により組織新生が起こること(distraction histogenesis, tension stress effect;イリザロフ原理)を利用して骨を延長する方法で、前世紀中頃にGavriil Abramobich Ilizarovにより発見され、脚長差の補正や小人症の治療に用いられてきた1,2)。近年、身長に影響するような疾患のない方の低身長(constitutional short stature)に対しても、同様の方法を用いて脚延長術を行い、身長を伸ばすという治療が行われるようになってきており、その治療成績の報告が散見されるようになってきた3, 4)

われわれも低身長に悩む方々に対し、以前より脚延長術を行ってきた。スカイ整形外科クリニックでは、イリザロフ法の手術経験豊富な常勤整形外科医師が3名おり、ほぼ毎週のようにイリザロフ手術を行っている。症例の内訳は骨折の整復固定、変形矯正、小児疾患の骨延長、足の変形矯正や骨折治療後の後遺症(偽関節、骨欠損など)など多岐にわたるが、それらに比較して美容的脚延長術は手技的には決して難度の高い手術ではない。しかし、美容的脚延長に特有のいくつかのポイントやピットフォールがある。この論文では、スカイ整形外科クリニックでの美容的脚延長術の流れと、延長術の合併症について述べる。美容延長は多くの場合下腿の延長を行うので、下腿延長に照準を絞って述べる。

【治療の流れ】

1. 医師によるカウンセリング

術前のカウンセリングは非常に重要である。骨延長は他の美容手術と異なり、痛みを伴うリハビリテーションに耐えることが要求され、治療期間も長期にわたるため、本人のモチベーションが治療の結果を左右する鍵となる。延長をしようと決心するに至った経緯や現在の仕事などをよく聴取する。

一人の力で治療を完遂するのは困難なことが多いため、特に手術直後は身辺の世話をしてくれる協力者がいることが理想である。

イリザロフ法による骨延長は治療期間が半年から1年(場合により2年近く)かかるが、治療期間には個人差が著しいため正確な予測が困難である。従って時間的な余裕がある程度必要となり、延長志願者の社会的背景なども聴取しておくことが重要となる。

この治療の対象になるのは、15歳から40歳くらいまでの健康な方である。しかし、15歳未満でも既に成長がほぼ終了している場合、治療対象となり得る。一般的に年齢が低い方が骨形成には有利であるが、体質や本人の努力などにも大きく影響されるため、一概には言えない。

喫煙は血流を悪くし、明らかに骨形成を妨げる。タバコを全く吸わないか、最悪でも禁煙して数ヶ月以上経っていることが絶対条件と考えている。

ステロイド剤、免疫抑制剤などを使用していたり、糖尿病などの易感染性の疾患がある場合、ピン刺入部の感染症悪化のリスクが高いため、治療の適応とはならない。

医療スタッフの指示に従うことができないコンプライアンス不良例では、治療がうまくいかないことが多く、治療の適応には慎重でなければならない。場合により、事前に精神科のコンサルトが必要なこともある。Catagniらは、”dysmorphophobia”(自らの身体に対し醜いという先入観にとらわれてしまう状態)と呼ばれる精神疾患の例については手術を行わないという立場をとっている3)

治療の合併症、およびその対処法にいては、十分に説明し、理解していただかなければならない。合併症に目をつぶっていてはこの治療を始めるスタートラインにつくこともできないと考えている。

最後に、イリザロフ創外固定器の衝撃的な外観に術後に初めて遭遇すると一種のパニックに陥ってしまう場合があるので、カウンセリングの際に実際の固定器や固定器装着中の写真を見て頂くことも重要である。

2.コメディカルスタッフ(イリザロフサポートチーム)によるカウンセリング

美容的脚延長術を受けられる方は、本来身体的な疾患があるわけではないため、保険が適応されず自費診療となることを十分に説明しておくことが重要である。入院費を含めた手術のための治療費のみならず、合併症発生時の対応に必要な経費などについても、事前に話しておくことが必須である。

イリザロフ創外固定器装着中は普通の衣類を装着するのが困難であるため、衣類の改造のアドバイスを行い、治療開始までに準備しておいていただく。衣服の改造の代行サービスの案内も行っている。

治療中に必要な松葉杖や車いす購入のサポートも行う。遠方の方で退院後クリニック周辺に滞在を希望される方には、アパートなどの紹介を行っている。

3.手術日決定から入院まで

手術日が決定すると、2〜4週間前に全身麻酔のための術前検査を行う。血液検査、尿検査、胸部
X線撮影、心電図などの検査をルティーンで行っている。喘息患者には少なくとも最近1ヵ月の間、発作がなかったかどうかを聴取しておき、発作があった場合は、体調が安定するまで手術を延期する。

4.入院から退院まで

通常、手術前日の入院となる。
手術当日は安静臥床となるが、翌日には点滴を抜針し、離床をはかる。硬膜外チューブを留置している場合、術後1〜3日くらいで硬膜外チューブを抜去し、以後の鎮痛は内服薬や座薬を用いる。術後5日間は抗生物質の点滴も行い、それ以降は必要に応じて内服の抗生物質を用いる。

手術翌日から下肢の関節のROMを中心とした理学療法を開始し、硬膜外チューブを抜去した後は、積極的に立位、歩行を行う。早ければ、術翌日より松葉杖での立位が可能である。本人の疼痛が許す範囲で荷重をかけても問題はなく、積極的に松葉杖歩行を含む理学療法を進めていく。

術後1週間目から延長を開始する。延長は患者自身がスパナを持って1回0.25 mm1日2〜4回(年齢に応じ、0.5 mm1.0 mm)のペースで行うように指導する。

入院期間は原則として2週間で、退院までにADL動作、松葉杖歩行、延長の操作が自立することを目標とする。また、退院後の自宅での理学療法を指導し退院となる。

5.術後の通院

退院後は外来で、X線検査や関節の可動域検査を行う。骨が正しく伸びているか、骨形成の程度はどうかを十分に評価し、骨形成や関節可動域に問題があれば、適宜延長速度を調節したり、理学療法の指導を行う。

退院後の最初の1ヵ月間は、延長の至適なペースを決定するため毎週1回のX線チェックを行う。成人では通常0.75mm/dayが一般的だが、骨形成が不良な場合、無理をして伸ばさず、0.5mm/dayくらいでゆっくり無理なく延長するのがよい。

5センチの延長だと、通常2〜3カ月で延長が終了するので、その間は2週間に一度、関節の状態や固定器のチェックと、X線撮影により骨形成の状態を評価する。この期間は伸びていく骨に周囲の軟部組織の伸長が追いつくようにするためのリハビリテーションが非常に重要な時期となる。

通常、5〜8センチくらい延長すると膝関節や足関節の拘縮が強くなり、延長の限界が訪れる。美容延長の志願者は延長に対する情熱が非常に強いので、少しでも多く延長したいと希求するが、永続する後遺症を残さないためにも関節拘縮が可逆性と思われる段階で延長を中止し、無理な延長は慎むべきである。

延長が終了すると、特にトラブルがなければ1〜2カ月に一度の診察でよい。延長による新たな変形が生じれば、この時期に矯正する。仮骨形成が進んでくると、松葉杖歩行の安定感が増し、屋内では松葉杖なしの移動も可能となる。また公共交通機関を使っての外出も可能になることが多く、ADLはほぼ自立し、独力で外来通院も可能となる。

6.固定器の抜去手術

骨癒合がほぼ完成したことを確認すると、仮骨部を連結するロッドの一部を除去する。軸方向の
dynamizationがかかるロッドに変更することもある。

骨癒合が完成すれば抜釘の日程を決定する。

ハーフピンを抜去する際に無視できない疼痛があるため、抜釘も全身麻酔で行うようにしている。そのため、3〜7日くらいの入院を要する。骨形成の状態により、ギプス固定を行うこともある。

7.固定器抜去後

抜釘後約1カ月間は再骨折のリスクがあるため、松葉杖で免荷しながら転倒などの事故に十分注意して生活するように指導する。

抜釘後3カ月間再骨折や骨変形などの問題がなく、関節の可動域も良好であれば、治療は終了となる。少しでも問題があれば、さらに経過観察を続ける。

【手術方法】(図1、2)

手術は原則として全身麻酔で行う。術後の鎮痛のために硬膜外チューブを留置する。硬膜外麻酔を併用しない場合は、PCA(経静脈的モルヒネによる)による鎮痛をはかる。

患者ごとに最適なリングサイズを選択し、事前にpre-constructionしておく。基本的にリングは近位部2段、遠位部2段の構成である。X線像の計測で、脛骨のアライメント異常があれば、変形を矯正するために、変形にあわせてヒンジを組んでおく。

透視下に脛骨の骨軸に垂直(膝関節面と3°の角度)にreference wireを刺入する。次に最も遠位のリングに脛骨と腓骨をともに貫くように(4回皮質骨を貫く)、tibio-fibular wireを刺入する。この段階で透視下に二方向でアライメントを確認し、脛骨の骨軸とイリザロフフレームの軸が一致しているかどうかを十分に確認する。場合により近位部か遠位部(あるいは両者)にさらにワイヤーを1〜2本追加する。

次に近位部に2〜3本、遠位部に4〜5本のハーフピンを追加する。美容延長の場合、創外固定期間が1年以上に及ぶ場合もあるため、フレームのstabilityを十分に確保することが非常に重要である。ハーフピンのうち近位の1本は脛骨から腓骨の近位端部の骨内まで刺入する。(この操作は腓骨神経損傷に十分な注意が必要である)近位脛骨腓骨間の固定はワイヤーで行うこともある。

フレームのconstructionが完了すると、骨切りを行う。腓骨は遠位部で、脛骨は近位の骨幹端部と骨幹部の移行部くらいで行う。骨切りを行う前にフレームの近位部と遠位部の連結を外しておくことが非常に重要である。骨切りのための皮切はノミが入るくらい大きさで、1センチ弱くらいで十分である。骨膜を剥離した後、2ミリ径くらいのキルシュナー鋼線でたくさんの穴を開けておくが、その際、熱による細胞の壊死を起こさないように生理的食塩水で冷却しながら行う。それらの穴をつなぐように7ミリ幅くらいのノミで骨切りを行う。

骨切りが完了したことを透視下で確認した後、近位と遠位のフレームを4カ所で連結し、手術を終了後、X線撮影を行う。

A

B C
図1 症例1(18歳男性)
A 両下腿の延長術を行った
B 手術直後のX線前後像。骨軸と延長のロッドが平行であることが重要である。
C 手術直後のX線側画像。リングの間より脛骨の骨切り部が見える。側面でも骨軸と延長のロッドは平行になっている。
     
A B C D

図2 症例1(その2)

A 術後3ヶ月目のX線前後像。7cmの延長に成功。アライメントも問題はない。
B 術後3ヶ月目のX線側画像。
C 術後1年2ヶ月で抜釘を行った。抜釘後2ヶ月のX線像にて、骨形成は良好。
D X線側画像にても、アライメントの異常なく、良好な骨形成が得られている。
【合併症】
1.ピン刺入部感染

表層性の軽度のものを含むとほぼ全例に延長中感染を経験する。感染、およびその悪化の予防には刺入部の保清が最も重要である。入浴は血行を促進し、保清を保つ上で有効であり、積極的に行なう。また、感染の徴候が認められた場合、抗生物質の内服も有用である。

全例で感染は表層性かつ一時的で、抜釘後にはすべての感染は沈静化し、永続する骨髄炎など、後に問題を残した例はない。

2.神経損傷・神経麻痺、コンパートメント症候群

下腿の延長の場合、損傷に注意しなければならないのは腓骨神経である。幸い美容的骨延長術での術中、術後の神経損傷の経験はない。軟骨無形成症の1例1肢で延長中に原因不明の腓骨神経麻痺を経験したが、延長を中止し神経剥離術を追加することで麻痺は回復した2)

下腿のコンパートメント症候群も術後に足関節、足趾の背屈制限をきたすため、腓骨神経麻痺とまぎらわしいことがある。コンパートメント症候群が強く疑われれば、早期の筋膜切開が必要となる。

3.骨癒合遅延・偽関節
骨形成能には非常に個人差があり、一概には言えないが、一般的には年齢が低いほど骨形成は良好である。しかし、20歳前後でも骨形成が不良であった症例も経験しており注意が必要である。骨形成が著しく不良の場合、骨移植術が必要となる。
4.創外固定器抜去後の骨折
これまでの多くの骨延長術の経験から骨折はほとんどの症例で抜釘後1か月以内に起っているため、抜釘後1か月はギプス固定を追加したり、松葉杖歩行を厳密に守るよう生活指導を行っている2)
5.関節の拘縮

延長骨の隣接関節には延長に伴い関節の可動域制限が起る。下腿延長の場合は足関節の尖足が起こることが多い。

治療中の理学療法による拘縮の予防は非常に重要で、一度高度な拘縮が起こってしまうと回復には途方もない時間と努力が必要になってしまう。

しかし、美容的な延長を望む方は概してモチベーションが高く、努力家が多いので高度な拘縮に至る例は意外と少なく、アキレス腱延長術が必要となった例は経験していない。

6.延長後に生じる変形

下腿では延長に伴い外反前方凸変形が起る傾向にある。延長中に起ってしまった変形に対し、延長終了後にヒンジを組んで簡単に矯正できることがイリザロフ法の大きな利点であるため、理論的には変形が遺残することはない(図34)。

前方凸変形が遺残すると膝の屈曲拘縮が遺残するため、歩容が大変不良となる。著明な変形治癒の場合、イリザロフ法による変形矯正手術が必要となる。(図5)

7.皮膚の瘢痕
イリザロフ法による骨延長術を行うと、骨切りのための1 cm弱の皮切と、ピンやワイヤーの刺入部による術後瘢痕が残る。特にピンやワイヤーの刺入部の皮膚は延長により上下に引き伸ばされるため、延長方向に伸びた瘢痕となる。下腿は男性の場合毛が多い部分なので、男性でこれを問題視する方は少ないが、醜状瘢痕がどうしても気になるなら、後に瘢痕形成手術を行うこともある。
8.変形性関節症
骨延長後に隣接関節の変形性関節症が起こるという動物実験でのエビデンスがある5)が、実際のところはよくわかっていないことが多い。しかし、関節拘縮が強く起こるような無理な延長を行えば、関節に許容範囲を超える圧がかかることが予測されるため、限界を超えた無理な延長は慎むべきである。
A B C D
図3 症例2(35歳男性)
A 両下腿の延長術後2ヶ月目のX線前後像。5cmの延長に成功したが、両下腿の外反および前方凸変形のため、ピンの追加と変形矯正用のヒンジを組んだ。
B X線側画面にて前方凸変形が顕著。
C 変形矯正終了後のX線前後像。
D 変形矯正終了後のX線側面像。

A

B
図4 症例2(その2)
A 術後7ヶ月で抜釘を行い抜釘後1ヶ月目のX線前後像。
骨形成、アライメントともに良好である。
B 術後7ヶ月で抜釘を行い抜釘後1ヶ月目のX線側画面。
前方部での骨形成が不完全ではあるが、アライメントは良好である。この後、骨折もなく順調に経過し原職に復帰した。
A B C
図5 症例(38歳男性)
A 中東某国でイリザロフ法による両下腿延長手術を受けた。両下肢は醜く変形し膝の完全伸展・踵接地不能。
B X線前後像。内反変形を認める。
C X線側面像。前方凸変形が著しい。
A B C
図6 症例3(その2)
A 右側変形矯正手術直後のX線像

B 矯正終了し抜釘直前のX線像。延長後の骨硬化部での矯正のため、骨形成は遷延し抜釘まで8ヶ月を要した。

C 抜釘後2ヶ月のX線像。アライメントは良好で膝の可動域も正常化した。この後左側も同様に矯正を行った。
【考察】

Gavriil A. Ilizarov1)により提唱されたイリザロフ原理を用いた骨延長術は疾患や外傷による脚長不等などに対する治療法として今や確立したものであるが、近年病的な原因ではない低身長に対する治療としての脚延長術の報告が散見されるようになってきている。

2007127日のアメリカのABCニュースでは、ポピュラーになりつつある脚延長術について、$120,000もかかる”controversial and grueling procedure”として紹介された6)。この記事の中で、ニューヨークのRobert Rozbruch医師は脚延長術について、安全で効果的な手術であり、その人の人生に大きな変革をもたらすと述べている。同氏は多くの手術の依頼を受けている理由につき、「好むと好まざるにかかわらず、もし断れば、彼らは他のところに行ってしまう。他のところとは例えば中国、エジプト、ギリシャ、ロシア、イランなどであり、それらの国では$20,000くらいで手術ができるかもしれないが、医療レベルは到底理想的とは言い難い。」と述べている。

身長が就職に大きな影響を及ぼす中国では、骨延長術を受ける若者が爆発的に増え、技術を伴わない医師による手術の結果、下肢変形を残したり、以前のように歩けなくなってしまう例も発生するという社会問題が発生し、2004年のLancet7)に取り上げられた。

以後も多くの不適切な手術が行われ続けた結果(after a spate of botched operations)下肢変形を遺残した患者が続出し、200611月には、中国のHealth Ministryが脚延長手術を、一部の認められた病院を除いて禁止したと発表する8)という騒ぎになった。

日本ではまだ美容的脚延長術を行う施設はほとんどない。そのため、どうしても背が高くなりたい希望者たちの中には海外に救いの手を求めてきた者もいる。ところが、美容的脚延長術を海外で受けて、拘縮や変形が残ってしまい、救いを求めて日本の医療機関を受診する方が意外と多い(図5)。本来は手術をした医師が責任を取るのが当然であるが、骨が伸びたのだから、文句はないだろうと誤摩化されてしまったりすることもあり、その国の言葉で適切なクレームをつけることははなはだ困難で、泣き寝入りをせざるを得ない状況になってしまうようである。合併症の治療は最初に行う脚延長手術に比べ、当然難度は高くなってしまうので、それならば、初めから日本で手術を行えば、低身長に悩む方々にとって福音ではないかと考え、保険外診療としての美容的脚延長術に取り組むようになった。

骨延長術は痛みを伴う長く苦しい治療であるし、多くの合併症の可能性もある。そのような手術を健常者に行うことについては倫理的な面でいまだ議論のあるところである。しかし、低身長に真剣に悩んでいる延長希望者たちに「神様から与えられたもので満足しなさい。」などと、上からの目線でしたり顔で説得したところで、何の慰めにもならず、先述のRozbruch医師の述べているように別の病院を尋ね歩くだけであるのもまた事実である。Rozbruch医師のもとで手術を受けた患者は、神様から与えられたもので満足するべきなら、どうして人は白髪になってくると髪を染めるのか納得できないと述べている。Rozbruch医師も、「40年前は女性の大腿から脂肪を吸引するなど全く邪道であったが、数多く行われるようになってくると、徐々に受け入れられてきて日常的な事柄となるものだ。」と述べている。

Catagni3)も述べているように、最も大切なことは患者自身が、延長に対するモチベーションが十分に高く、しかも骨延長術の方法および合併症をよく理解することである。その上で、医師患者間の信頼関係が確立されていることが非常に重要である。

骨延長術で患者にとって最もつらいのは、長期間の創外固定器装着での生活であろう。髄内釘併用の骨延長術(Lengthening Over Nail)は創外固定期間を著明に短縮することができるため、近年美容的脚延長術に適用する報告4)が散見される。今後の展望として、髄内釘を用いた延長術も並行して行っていく予定である。

【文献】

 1) Ilizarov GA: Clinical Application of the tension-stress effect for limb lengthening. Clin Orthop 250: 8-26, 1990.

2) 柏木直也. 軟骨無形成症の四肢延長. 整形外科57: 353-60, 2006.

3) Catagni MA, et al.: Cosmetic bilateral leg lengthening; experience of 54 cases. J Bone Joint Surg 87-B: 1402-5, 2005.

4) Park HW, et al.: Tibial lengthening over an intramedullary nail with use of the Ilizarov external fixator for idiopathic short stature. J Bone Joint Surg 90-A: 1970-8, 2008.

5)  Stanitski DF: The effect of limb lengthening on articular cartilage. An experimental study. Clin orthop 301: 68-72, 1994.

6)  Ann Marie Dorning: Controversial and grueling procedure lengthens limbs, risks lives. ABC News: Dec 7, 2007.

7)  Watts J: China’s cosmetic surgery craze; leg-lengthening operations to fight height prejudice can leave patients crippled. Lancet 363: 958, 2004.

8) Coonan C: China  bans leg-lengthening surgery. The  New Zealand Herald: Nov 6, 2006.

図の説明

1-a 18歳男性。両下腿の延長術を行った。

1-b 手術直後のX線前後像。骨軸と延長のロッドが平行であることが重要である。

1-c 手術直後のX線側面像。リングの間より脛骨の骨切り部が見える。
側面でも骨軸と延長のロッドは平行になっている。

2-a 術後3カ月目のX線前後像。7センチの延長に成功。
アライメントも問題はない。

2-b 術後3カ月目のX線側面像。

2-c 術後1年2カ月で抜釘を行った。抜釘後2カ月のX線像にて、
骨形成は良好。

2-d X線側面像にても、アライメントの異常なく、良好な骨形成が得られている。

3-a 35歳男性。両下腿の延長術後2カ月目のX線前後像。
5センチの延長に成功したが、両下腿の外反および前方凸変形のため、
ピンの追加と変形矯正用のヒンジを組んだ。

3-b X線側面像にて前方凸変形が顕著。

3-c 変形矯正終了後のX線前後像。

3-d 変形矯正終了後のX線側面像。

4-a 術後7カ月で抜釘を行い、抜釘後1カ月目のX線前後像。
骨形成、アライメントともに良好である。

4-b 術後7カ月で抜釘を行い、抜釘後1カ月目のX線側面像。
前方部での骨形成が不完全であるが、アライメントは良好である。
この後、骨折もなく順調に経過し現職に復帰。

5-a  38歳男性。中東の某国でイリザロフ法による両下腿延長手術を受ける。
両下肢は醜く変形し、膝の完全伸展、踵接地不能。

5-b X線前後像。内反変形を認める。

5-c X線側面像。前方凸変形が著しい。

6-a 右側変形矯正手術直後のX線像。

6-b 矯正終了し、抜釘直前のX線像。延長後の骨硬化部での矯正のため、
骨形成は遷延し抜釘まで8カ月を要した。

6-c 抜釘後2カ月のX線像。アライメントは良好で、膝の可動域も正常化した。
この後、左側も同様に矯正を行った。


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